アパートに戻って、ざるそばを湯がき、冷水で洗って、よく水を切って皿に盛った。
 そして、そばの上にワサビをちょんと付けて一口すすった。
 
 う~ん、旨い! 
 
 乾麺とは風味が違っていた。
 少しリッチな気分になったので、すぐにアジフライに味ぽんをかけて食べた。
 すると肉厚の身が口の中を満たして至極(しごく)を連れてきた。
 
 たまらんな~、
 
 思わず独り言ちた。
 
 食べ終わって、残ったつゆにそば湯を足した。
 すするように飲むと丁度いい塩梅(あんばい)で、思わず頬が緩んだ。
 
 13時になった。
 電話がいつ来てもいいようにトイレでオシッコを絞り出してからちゃぶ台の前に座って、台の上に置いたスマホに向かって両手を合わせた。
 
 受賞しますように!
 
 正座をしたまま、何度も祈った。祈り続けた。
 
 しかし、1時間経っても2時間経っても夕方になってもスマホは無言を貫いた。

 そりゃそうだよな~、そんな簡単に受賞できるわけないよな~、

 受かることしか考えていなかったわたしは自分の単純な思考回路に苦笑するしかなかったし、これ以上待っても仕方がないので、タオルと下着を持って銭湯に向かった。