わたしの名前〈叶夢〉に込めた両親の願いは知っていたし、そこに二つの想いが込められていることもわかっていた。
 
 ・この子の夢が叶って幸せな人生が送れますように
 ・才高家が永遠に続くという夢が叶いますように
 
 わたしが家を継げば名前に込めた両親の想いは二つとも成就するが、そうでなければ二つ目の想いは叶えられないことになる。
 才高家の歴史は終わってしまうのだ。
 しかし……、
 
 あの日から、そして、進学してからも、夏休みや冬休みで帰省したわたしを仕事場に連れて行かなくなった。
 宮大工の技を教えようとしなくなった。
 わたしに才高家当主を継がせることを父は諦めたのだ。
 
 一方、妹は今までと同じように父の仕事場で見様見真似を繰り返していたようだが、父が指導することはなかったらしい。
 母は黙ってこの状況を見守っているように見えた。