結城がたまに行くという洋風居酒屋で乾杯した。
 ビールが、久しぶりの生ビールが旨かった。
 精一杯仕事をして、やり遂げて、結果を出して仲間と祝うビールの旨さを初めて知った。
 
 クゥ~、幸せ!

 天国へ昇るような気持ちになった。
 体中の細胞が活性化して一気に2杯目を飲み干すと絶好調になった。
 ビールが進めば進むほど美顔の社長やパンフレットの話で盛り上がり、結城と何度もジョッキを合わせた。
 楽しかった。
 本当に楽しかった。
 
 彼女も笑顔満開になった。
 チャンス!
 紙袋をそっと彼女に差し出した。
 
 すると彼女は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに笑みを浮かべてわたしに礼を言った。
 しかし、受け取ろうとはしなかった。
 
 それは予想していたことだった。
 だから笑いを取るような口調で「わたしが貰っても豚に真珠だからね」と告げてもう一度彼女に差し出した。
「それに、君に使ってもらいたいから」
 少し照れたが、歩きながら考えていた言葉を口に出すことができた。
 すると、一瞬彼女は躊躇いを見せたが、それでも小さな声で「ありがとう」と言って、今度は受け取ってくれた。
 わたしはさっきより照れ臭くなってジョッキに残ったビールを一気に飲み干したが、何を話したらいいのかわからなくなったのでトイレに立った。
 
 鏡に顔を映すと目の周りに赤みがさしていた。
 蛇口をひねって水道水で顔を洗って酔いと火照りを鎮めた。