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 入社して初めての給料日がやって来た。
 人生初めての給料だ。
 小説家の時は印税収入や原稿料が主で、給料というものを受け取ったことがない。
 ちょっとワクワクした。
 
 給料袋を開けると、横長の紙が出てきた。
 給与明細だった。
 支給額は19万8千円。
 その横に控除の欄があった。
 健康保険や厚生年金、雇用保険、そして、所得税や住民税といった項目が印刷されている。
 控除合計は約4万円。
 なので、手取り金額は16万円弱。
 この金額が銀行口座に振り込まれているらしい。
 
 昼休みに銀行のATMで確認したが、記帳されたページを見てちょっと感動した。
 すると、やり直し(・・・・)という言葉が浮かんできて、地に足を付けて着実にやらねばならないという気持ちが沸き起こってきた。
 そのせいか、機械から出てきた1万円札を手にした時、今までに味わったことのない重みを感じた。
 と共に東京落ちした時の惨めさと美顔の社長の苦労話が脳裏に浮かんだ。
 1円を得ることの大変さをしみじみと感じたので、大切に使わなければならないと心からそう思った。