「美術館を造ったら依頼する画家も決めています。といっても有名な画家ではなく将来の画家ですが」

 社長は立ち上がって、机の後ろに掛けてある絵を持ってきた。
 
「この絵を描いたのも将来の画家の一人です」

 風景画だった。
 林の中に遊歩道と小川と休憩所が描かれていた。
 
「美顔・健やかパークを描いた絵です。素敵でしょう」

 社長は再び椅子に座って話し始めた。
 
「美術大学の学生の絵です。彼らに頼もうと思っています。『美顔・健やかパークの四季・12か月の表情』というテーマで風景画を描いてもらえないか、学校と交渉するつもりです」

 絵画専攻コースの責任者に内々に打診したところ、「学生にとってとても励みになるお話です。学生の絵を多くの方に見ていただける機会はほとんどありませんので、こちらがお金を出してでもお願いしたいくらいです。ですから、あくまでも授業の一環として描かせていただきます」という返事を貰っているという。
 つまり、将来美術館が完成したら学生が描いた絵を無料で提供してくれるというのだ。
 
「美術館ができたらアトリエを併殺したいと考えています。絵心のある会員様が宿泊施設に泊まり込みながら作画に没頭できる環境を提供したいのです。自宅でアトリエを持つのは大変ですからね」

 零れるような笑みを浮かべた社長は更に大きな構想を口にした。