翌日の夕方、すべての会議と来客対応を終えた社長が社長室に戻ってきた。
 わたしと結城が立ってお辞儀をしようとすると、それを手で制して「お待たせしました。ちょっと失礼します」と言って上着を脱いでワイシャツ姿になり、秘書が持ってきた冷たいお茶をゴクゴクと飲んでから昨夜の続きを話し始めた。 
 
「美顔・健やかウォーキングのことを参加者の声と写真を添えて会員誌で紹介すると更に凄い反応がありました。それで改めて関心の高さを実感し、健やかな体への投資を本格的に始めることにしたのです。そして、健やかな心を育むための計画にも着手することにしました」

 昨夜と変わらぬ幸せそうな顔で社長が話し始めた。

篠山(ささやま)市の手付かずの自然が残る小高い土地を購入しました。野球場が何十個も入るような広さの土地です。適度な起伏があり、木々で覆われていました。しかし、何十年も手入れがなされていない状態で放置されていましたので、地主から安く購入することができました」

「そんな広い土地を、どうするつもりで……」

「『美顔・健やかパーク』建設のためです」

 はっ?

「会員の皆様の健やかな体作りに役立てていただく施設を作りたかったのです。最初は駐車場と遊歩道と数か所の小さな休憩所だけを作りました。四季それぞれの景色を楽しんでいただくと共に癒しを感じていただきながら気がつくと8千歩歩いている、そんな環境を作りたかったのです」

 予想もしない展開とそのスケールの大きさにただ驚くばかりだった。