「『美顔・健やかウォーキング』と名づけて会員誌で告知しました。全国を10ブロックに分けて、日程を決め、一緒に歩いていただける会員様を募集したのです。すると、凄まじい反応が返ってきました。驚くほどの応募があったのです」

 当時のことを思い出したのか、社長は嬉しそうに笑って、「ウォーキング当日は参加者の数だけ歩数計を用意しました。無料で差し上げたのです。皆さんとても喜んでいただいたのを覚えています。そこで参加者の皆様にこう申し上げました。『美しい顔は健やかな顔。健やかな顔は健やかな体から。皆さん、今日から毎日8千歩を目標に歩きましょう』と。大きな拍手が巻き起こりました。嬉しかったですね」と目を細めて更に話を続けた。
 
「緑広がる小道を会員の皆様と共に歩きました、色々な事を話しながら。ご自身のこと、ご家族のこと、仕事のこと、趣味のこと、本当に色々なことを色々な方と話しながら楽しく歩いたのです。するとあっという間に2時間が過ぎました。歩数計を見たら目標の8千歩を超えていたので、『8千歩超えました!』と大きな声で言うと一斉に拍手が沸き起こって、ハイタッチが始まりました。私も多くの方とハイタッチしました。興奮しました。そして感動しました。今でもその当時のことが目に浮かびます」

 わたしは身を乗り出して聞き入っていた。
 その次を早く聞きたかった。
 しかし、それを制するように結城がわたしの袖を引っ張って腕時計を見るように促した。
 22時を5分過ぎていた。
 思わず「あっ」という声を上げてしまったが、直ぐに長居したことを詫びて小走りに玄関へ行き、結城と二人で深々と頭を下げてお礼を言った。
 すると、「またお越しください」と奥様が優しい笑みを投げかけてくれた。
 横で頷いた社長は「続きは明日会社でお話ししますね」と優しい言葉をかけてくれた。