「母から借りた資金を使い切る前に売上が経費を上回るようになりました。黒字が出るようになったのです。自立できる目処がつきました。なんとかやっていけると、安堵と共に希望が膨らんできました。でも、気は緩めませんでした。どん底に落ちて資金繰りに七転八倒したことを忘れないように自らを戒めるものを作ったのです」

 社長は背広の内ポケットから名刺入れを取り出し、その中から名刺大のカードを抜き出した。
 受け取ると、そこには『1円の売上増、1円の経費減、1秒のスピードアップ』と書かれてあった。
 資金繰りで絶体絶命のピンチを経験した社長は1円の重みを思い知ったという。
 そこでそのことを忘れないようにカードに印刷して肌身離さずいつも持ち歩いているだけでなく、全社員に配って朝礼時に唱和までしているという。
 
 初心忘るべからず! 
 
『1円を笑う者は1円に泣く』と言うが、今のわたしにはそのことがよくわかる。