翌日の昼前に連絡が来た。
 面接を受けられるという。
 日時を紙に書き留めて、丁寧にお礼を言った。
 電話が終わると、一気に力が抜けた。
 ホッとしたというよりもなんとか首の皮が繋がったという気持ちの方が強かった。
 思わず首に右手を持っていった。
          
 面接当日は早めにアパートを出た。
 会社の近くのコンビニでトイレを済まして鏡に向かって笑顔を作ったが、ぎこちなかったので何度か練習してからコンビニを出た。
 
 出版社は小さなビルの3階にあった。
 かなり古そうなビルだった。
 エレベーターは1基あったが、故障中で使用不可との張り紙がしてあった。
 仕方がないので階段で上がった。
 
 ドアを開けて用件を告げると、応接室に通された。
 絵も花もなく、ソファと机が置かれているだけの殺風景な部屋だった。
 
 座った瞬間、心配になった。
 服装がそぐわない気がしたのだ。
 背広は全部売ってしまったのでジーパンとシャツというラフな格好しかできなかった。
 一気に情けなくなったが、今更どうしようもないのでせめて真面目さをアピールしようとシャツの一番上のボタンを留めて姿勢を正した。