金を工面するためにあらゆるものを売った。
 時計、家具、電化製品、自転車、本、CD、DVD、洋服……、
 1円以上の価値のあるものはすべて売った。
 高く売れたものもあれば買った時の何分の一にしかならなかったものもあった。
 二束三文に買い叩かれたものも多かった。
 でも、そんなことはどうでもよかった。
 とにかく金を作らなければならないのだ。
 わたしには時間がなかった。
 売って売って売りまくった。
 
 その金でガールフレンドから借りた金を返し、少し手を付けていたカードローンも完済することができた。
 借金が無くなると、心が少し軽くなった。
 
 嬉しい誤算もあった。
 100万円ほどが手元に残ったのだ。
 作家として順調だった頃、無理して買ったロレックスやオメガ、カルティエなどの高級腕時計が高く売れたことが大きかった。
 ありがたかった。
 これからのことを考えると心許ない金額だが、自己破産をしなくても済んだことが、せめてもの救いだった。
 
 だが……、
 
 がらんとした部屋を見ると、ため息しか出なかった。
 スマートフォンと最低限の生活用品しか残っていないのだ。
 しかし、ため息をついてばかりもいられない。
 これからの生活設計を立てなければならないのだ。
 残った100万円でどうやって生活していくか、必死になって考えた。