為す術もなくその日の取引が終わった。
 病み上がりのボーっとした頭でその日の終値を見続けるしかなかったが、追証を差し入れなかったために証券会社が強制的に決済を行った。
 
 ジ・エンド!
 
 すべてを失った。
 600万円の保証金は全額差し押さえられ、その上、200万円の追加差し入れを迫られた。
 急いで現金や貯金を全部かき集めたが、100万円ほど足りなかった。
 ガールフレンドに頼み込んで金を借りてなんとか支払ったが、文字通り一文無しになった。
 当然、生活資金は枯渇した。
 だから初回契約から30日間は金利無料という説明に吸い寄せられるようにカードローンを申し込んだ。
 審査が通るかどうか心配だったが原稿料収入が毎月あることでなんとかクリアすることができたので、当面の家賃と生活費として100万円を借りた。
 
 なんとかこの危機を乗り越えることができたが、借用書類とゼロになった貯金通帳を見ていると涙が出てきた。
 そして、動悸がしてきた。
 更に、お腹に痛みを感じた。
 どんどん痛くなってきて、遂にはうずくまってしまった。
「大丈夫?」というガールフレンドの声が遠くの方から聞こえたように感じた時、意識を失った。

 リスクを余りにも軽く考えた浅はかなわたしは自分をコントロールすることもできず、甘い罠に溺れ、気づいた時には地の底まで沈んでいた。
 漆黒の闇が広がる光のない世界に……、