「お願いします」

 書類一式を担当者に渡すと、すべての書類が揃っているか一つ一つ確認したのちに登記申請書の会社名のところに指を置いてわたしを見つめた。
 そして、確かめるように小さな声で読み上げた。
 
「間違いありません」

 わたしは小さく頷いて書類に記載した会社名に目を落とした。

 伝想家。
 
 担当者は申請書類を受理し、わたしに微笑みかけた。
 その微笑みの中に、古の大工の笑顔を見た気がした。