完成したのは10日後の夜明け前だった。
 妻が起きるのを待ってそのことを告げると、「ちょっと待って、顔を洗ってくる」と言って洗面所に飛んでいき、すぐに戻ってきた。
 わたしは妻をパソコンの前に座らせて完成したものを見せた。
 すると、食い入るように見ていた妻は「よくできているわ」と言ってくれた。
 それを聞いてホッとした。
 今までの努力が報われたと思った。
 しかし、妻はパートナーであり、クライアントではない。
 肝心なのは妹の反応だ。
 依頼人である妹が気に入ってくれなければ意味がない。
 それにオヤジの反応が気になる。
 プロ中のプロであるオヤジに認められるのは容易なことではないのだ。
 朝早くから仕事場へ出かけて行った妹とオヤジが帰ってくるのをじりじりと待ちながら、何度も何度もチェックを繰り返した。