その夜はなかなか寝つけなかった。
 うとうと(・・・・)はするのだが、それ以上にならないのだ。
 それでもなんとか眠ろうとして寝返りを繰り返したが、睡魔が訪れることはなかった。
 
 諦めるしかなかった。
 それに横になっているのが苦痛になってきたので、布団をそっと抜け出して台所へ行き、椅子に座った。
 電気は付けなかった。
 明かりが漏れて妻や子を起こしてはいけないからだ。
 真っ暗な中、深夜の静寂に包まれてじっとしていた。
 
 しばらくすると僅かに明るくなった。
 雲間から月が出たのか、窓を照らしていた。
 わたしはその明かりを頼りに冷蔵庫の取っ手を掴んで扉を開け、清酒発祥の地と言われている奈良で買った冷酒を手にした。
 そして、戸棚からぐい?みを取り出した。