回廊の先には国宝・五重塔がそびえ立っていた。
 その高さは30メートルを超えている。
 飛鳥時代にこれほどの建造物を造ることがどれほど大変だったか……、見上げた瞬間、思わず息を呑んだ。
 607年と言えば、今から1400年以上も前のことになる。
 中国から朝鮮を経由して伝わったとされる宮大工の技術だが、よくぞそれを消化吸収してこれほどまでの建造物に造り上げたものだと、ただただ感服するしかなかった。
 残念ながら一度火災で焼失して再建されたと日本書紀に記されているが、それでも1300年を超えている。
 今も威容を誇るその姿に感動以外の感情は湧かない。
 地震の多い日本という国で倒壊しなかったその技術は東京スカイツリーにも取り入れられたと聞いたことがある。
 揺れを吸収する免振技術が現代に活かされているのだ。
 これは本当に凄いことだ。
 わたしは心を新たにして塔を見上げ、そして深々と頭を下げた。