その後は当然のように値動きの激しい新興株の投資にのめり込んだ。
 最初のように一企業だけでがっぽり設けることはできなかったし、思惑に反して一時的に株価が下がるものもあったが、それでも毎月15万円以上稼ぐことができた。
 
 しかし、株式投資にはまり込むのを戒めるかのように原稿依頼が減ってきた。
 連載が一つになってしまったのだ。
 それは、手にする原稿料が大幅に少なくなることを意味していた。
 焦った。
 といって編集者に泣きつくことはできない。
 原稿依頼を増やすためには魅力のある小説を書くしかないのだ。
 しかし、株式投資を止めて執筆に専念するのは怖かった。
 株の売買による儲けがなければ今の生活を維持することが難しくなるからだ。
 
 どうすればいいか? 
 
 考えるまでもなかった。
 原稿料収入の減少を補うためには更なる投資収益を上げなければならない。
 迷わず信用取引に手を出すことを決断した。
 しかしそれは素人の投資家にとって禁じ(・・・)と言われているものだった。
 今まではすべて現金で売買していたので、損をしても手持ちの金が減るだけで借金を背負うというリスクはなかった。
 しかし、信用取引は違う。
 大きな取引ができる反面、大きなリスクを背負い込むことになる。
 破産から人生崩壊へとつながるリスクだ。