杏仁豆腐が運ばれてきてそれをテーブルに置くと女性がコップに水を注いだので、「お子さんですか?」と訊きながら厨房で忙しく働く若い方の男性に視線を投げた。
 すると女性は頷いてから、「いつも怒られてばかりいますけど」と付け加えて息子の方に視線をやった。
 
「厳しいんですね」

「ええ。料理に関しては一切妥協しませんから」

 親子といえども厳しい師弟関係があることを匂わせた。

「でも、跡継ぎがいていいですね」

「ありがとうございます。早く一人前になってくれればいいんですけどね」

 目を細めた女性の顔は母性愛に満ちているように見えた。