「お兄ちゃん、決めてくれた?」

 日曜日の昼過ぎに匠を連れて実家に行くと、玄関で鉢合わせした妹に明るく声をかけられた。

「いや、まだ……」

 口を濁すことしかできなかった。

「そう……」

 がっかりしたような表情に変わった。

「わるい……」

 逃げるように背を向けて、靴を脱いだ。