あの日から、匠を寝かすの日課になった。
 可愛い寝顔を見ながら、この子にとって最高の父親像とは何かということを考え続けた。
 何をしてやれるのか、
 何を教えてやれるのか、
 何を助けてやれるのか、
 必死になって考え続けた。
 しかし、世間一般に言われているようなことしか思いつかなかった。
 正しい人の道を教えるとか、可能な限りの教育を受けさせるとか、やりたいことを思う存分やらせてあげるとか、困った時には手を差し伸べてやるとか、そんなことしか考えつかなかった。
 
 子供を育てるということの意味を本当にわかっているのだろうか? 

 自らに問うたが、〈まったくわかっていない〉という言葉が胸の奥から湧き上がってきただけだった。
 そもそも自分はまだ大人になり切れていない。
 というよりガキなのだ。
 視野が狭いし包容力もない。
 自分のことで精一杯のガキなのだ。
 
ガキが子育てなんてチャンチャラおかしいよな、

 自嘲的な笑いしか出てこなかったし、〈この子に見せる背中はまだない〉と思うと絶望的な思いに囚われた。