その時から妹と木の会話が始まった。
 木には強い木と弱い木があって同じに扱ってはいけないこと、土壌の質が違う木を混ぜて使ってはいけないこと、人の都合に合わせて無理に木を組んだらいけないこと、そんなことを木が教えてくれた。
 
 妹はその一つ一つをベテランの宮大工に話した。
 すると、妹の話を黙って聞いていた彼は嬉しそうに笑った。
 そして古に想いを馳せるように、「木の文化は日本の宝だ。雨に恵まれて土地が肥えているから立派な木が育った。木に囲まれながら生活したから木を愛し木を活かす心が日本人には宿った。だから、木の形や肌合い、その香りを愛し、それぞれの木の性質を生かして上手に利用する技術が生まれた」と言った。
 そして更に、「古の大工の技は凄い。千年以上、大地震が来ても、台風が来ても、彼らが作った五重塔や三重塔は倒れることがなかった。どんな強烈な揺れも吸収してしまうからだ。地震や台風に逆らってはいけない。地震が来たら揺れ、台風が来たら揺れる。揺れるからこそ倒れない。それを古の大工は知っていた。本当に凄い」と声を強めた。
 その技は、柔の技であり、地震や台風を受け入れ吸収する古の大工の技だった。

 本当に凄い! 
 
 妹は古の大工の知恵と技に感銘を受けた。