どうしよ。うるさいし、知ってる人いないし、ゆり葉どっか行っちゃったし、一人で帰れるかなあ……?
「おねーさん、1人?」
隅っこのソファーに座って考えあぐねていれば、誰かに声をかけられた。振り向くとそこに居たのは、キャップを深く被り、だるっとした服を着た、私と同世代と思われる男性だった。
「え、1人……です」
もしかしてナンパ?と思うのは、小娘として当然のことだろう。
「だよね、どうしたの?友達は?」
「えっと、友達とはぐれちゃって」
「そっかそっか。今日金曜だから人多いもんね」
「ああ、金曜だから多いんですか?」
「うん。普段もっと空いてるけどね。あ、友達が来るまでこっちおいで。君が良ければ」
「是非〜!!ありがとうございます!」
多分、いや、絶対ナンパだ。顔は悪くないし、一人でやるせなかったし。
ゆり葉たちが来るまで時間潰すか、一緒に帰るかしよ〜っと。
そんなふうに、呑気にその人に釣られて歩いていれば、突然、右腕を引かれて身体が後退した。
「!?」
揺らめく身体と、燻った香りにまざる、仄かなフゼア。