「海老センって課題提出すればとりあえずB以上の評価くれんのに、なにしてんの?」

ゆり葉が、もったいな、と不平をくっつける。けれども残念ながら、私はそうは思わない。

「いやー……だってあいつ、えぐいこと教えるじゃん」

「えぐいこと?例えば?」

昨日の古典なんか、『今夜寂しいから会いに来て、私と一緒にセックスしましょ♡』的な和歌サラッと教えてましたよ?

あれは、無知な高校生に卑猥なことを教えて自身のフラストレーションを昇華しているタイプだと思う。きしょい。

ゆり葉の反応を見るに全然わかってないもんなー……。

「海老センってさ、彼女いるのかな」

だから別の話題に変えてやる。話題のターゲットは、海老センである。

「あのビジュだよ?居ないでしょ」

「だよね。なんなら童貞だよね」

「わかる。童貞かほぼ童貞のどっちか」

「30まで童貞だったら妖精になるんだっけ?」

「え?海老セン30なの?」

「知らんけど、30かほぼ30じゃない?」

「わかる、あれはほぼ30」

「だよね〜。なんの妖精になるんだろ」

「海老の妖精じゃね?」

「ドンマイすぎる」

「せめて六本木クラブの水槽の中で泳いでる海老にしよう」

「ちょっとセレブ感出たね。おめでとう海老セン。そろそろ合コンの時間じゃね」

「だねー。行こー」

二人して立ち上がり、スクバを肩にかける。なにがほぼ30なのかは、わからないまま。