デートはなくても平気。だって、学校に行けば会えるし!

好きな人に絶対会える場所って貴重じゃない?高校生の特権だ。しかも私は先生の家まで知っている。絶対に会える場所を二箇所も。2段階認証もビックリだ。


「まあ、買い出しくらいなら付き合えば」

「やった!!」


無造作に髪を掻き分ける海老センに再び抱きついた。だからあぶねえって、と注意しながら、海老センは気怠げにタバコを咥えた。やはり、私に" はなせ "と言わない。


「まーくん、ありがとう!」

「まーくんやめろ」

「先生、大好き!」

「はいはい、ソウデスカ」

「冷蔵庫のプリン食べていい!?」

「それは駄目」

「そっか!ダメか!」


冷蔵庫のプリンは食べちゃダメ。あと、多分甘党。

あたらしい情報を脳内に刻んでいると「黒崎心桃」と名を呼ばれ、首を持ち上げた。

目の前にある澄んだ黒。吸い込まれそうな綺麗な瞳。


「浮気は禁止な?」


舐められているらしいので、私は大きく頷いた。海老センは満足そうに微笑んで、私の頭を撫でた。帰りは送ると言われたので、初デートだと喜んだ。


胸の端っこで、幸せが積もる音がした。