至近距離で、美しい微笑みが開いた。初めて見た笑顔だった。こうやって、私の中に" ハジメテ "が積もってゆく。心臓が擽ったい。頬に熱がこもる。
そのうちぷしゅう、と空気が抜けて、脱力しそうになる身体を踏ん張った。
「がんばる!超頑張る!先生の視線独占する!海老センに、よそ見禁止法出す!」
「それは言い過ぎだろ……いや待って、黒崎ならやりかねないな?お前やり過ぎるなよ?」
先生の目が訝しげに細くなる。基準が分からないので、やってみてダメな場合は却下を積み重ねていく事になるだろう。そうやって、私なりの境界線を見つける方が良い。
おそらく彼は、私に何も教えてくれない。
好きなタイプ、嫌いなタイプ。
甘いものが好き?辛いのが好き?
休みの日は出かける方なのか、音楽の傾向だって。
でも、そっちが絶対にイイ。
勉強だって同じ。答えを先に知ったら身にならない。解き方を教わるでしょう?
だから、いいの。
" 好き "を教わって知るよりも、" 好き "を自ら見つけて、同じ" 好き "を重ねていく方が、絶対に。