「嬉しい!!ありがとうまーくん!!」

「だれがまーくんだ」


うんざりした声が上から降ってくる。なのに、放せもやめろも言われないので、私を余計、調子に乗せた。

海老津 眞白。何者でもなく、彼のせいだ。


「さては、海老センもチョロい男だな」

「は?何湧いてんの」


私のテンションがビッグウェーブに乗りすぎて、思わず、口に出したらしい。しかも「いい加減サムい」とか言って、腰で押し返されてしまった。離れていく温度に、ちょっぴり、寂しさ。

嘘。

それを上回る体温が、私の心臓の内側で弾けている。


「絶対浮気しないから、海老センも浮気しないでよ?」

「……」

「は!?するの!?それはアリなの!?」


ガーン、と脳裏で悲しいエコーが鳴り響く。どうするべきか。どうすれば私より遥かに経験値の高いこの人を捕まえることができるのか。

う〜ん、と頭を悩ませていれば、突然、海老センが窮屈そうに腰を折った。おかげでレベチな顔面が至近距離に現れ、危うく心臓が止まりかける。



「黒崎が俺を退屈させなければ、ほかの女は見ねえよ」