色素は薄いくせに、少し厚めのくちびる。タバコを食む仕草が余計色っぽい。

短くなったタバコを咥え辛そうにする海老センは、大きなため息を落とした。その息が、紫煙となって色づいては、この部屋の空気となって消える。

その不服そうな顔ですら私にとってはご褒美フェイスだ。

「海老センは、迷惑?変なのに首突っ込んだな〜って、鍵渡さなきゃ良かったって、後悔してる?」

「するなら、クラブで声掛けた時点で後悔してるわ」

「(私がこの部屋にいるのは、後悔してないんだ……)」

ちょっぴり嬉しい。嬉しいというより、幸せ。うんざりとしている海老センのおかげで、私はいま、幸せがふくらんでいる。


「大丈夫だよ、海老センのこと脅したりしないよ」

「とか言って、スマホむけんのはなんで」

「写真撮ろうかなって」

「ばっちり脅す気だな」

「記念にするだけ!良いじゃん!」

「無理」

スマホをぐいっと手で覆い隠され、画面は真っ暗になる。