「お前何考えてんの」

ダクトの下。海老センは体をキッチンに凭れ紫煙を燻らす。

私はと言うと、勝手に押しかけて勝手に料理を作るという厚かましさのオンパレードなので、使った器具をきちんと洗っていた。手際いいなと海老センは褒めてくれた。

調子に乗って、鼻歌交じりになっていたら、これだ。

何考えてんの、って。


「先生のこと、好きになってもいい?」


確認を取るのもおかしい感情。すると海老センは私に向かって思い切り煙を吐き出した。

煙で目が滲みるし、海老センが吐き出した煙が私の肺に染み込んで溶ける。やっと目が慣れて見上げると、不機嫌に眉根を寄せる海老センが居た。


「駄目」

「やだ」

「好きになっても意味ねえよ」

「無意味なものかは私が決めることだから、海老センには関係ないかな」

「……」


反論を用意していなかったのか、海老センは言い返さない。その間に、最後の1枚を洗い終えた。