古典準備室には近寄るなと言われたので、言われた通り我慢した。私、意外と聞き分けがいいの。

だって、海老センの家に行けばいいじゃん。お望み通り、即行った。

「マジで来たのかよ」

「マジで来ました!」

学校よりも気怠さを纏った海老センはうんざりとしていた。私の記憶力を侮っていたらしい。女子高生の行動力と執着を甘く見ないでほしい。


「そういえば黒崎、頭良かったな」

海老センは褒めてくれたので、私は満足だった。半分、諦めていたと思う。


「ねえ先生、私、ご飯作れるんだ〜!作ってあげよっか?ていうか作るね」

「作らなくていい」

「材料買ってきたんだ!」

「今週はUberでだらけるって決めてんだよこっちは」

「うん。一日くらい良いじゃんね!愛する生徒のお手製晩御飯だよぅ〜!きゃー!先生、嬉しいね〜」

「愛する生徒がどこにも見当たらね〜なあ」

都合の悪いことは無視した。

海老センにはシチューを作った。全人類シチュー好きでしょ。知らんけど。

海老センらしく、魚介のシチューにした。サーモンと海老。シチューにエビ入ってんの初めて食った、と、意外と気に入ってくれたらしい。

「また作るね!」

「作らなくていい」

しかし、手応えは無いのは何故だろうか。