「せんせ、質問がありまーす」と挙手すると「授業のことならどーぞ」海老センは軽いノリで答える。

「なんでゆり葉はほっといて、私は連れて帰ったの?」

「あいつは慣れてる、おまえは慣れてない、以上」

「は!?偏見やめて貰っていい!?」

「実際そうでしょ」

そうである。私に遊び方を教えたのはゆり葉で、ゆり葉とは今年、同じクラスになってからの付き合いだ。

しかし、ここで認めるのは即ち負けを認めると同意。

それは良くない。全然良くない。

「海老セン、眞白って名前なんだね」

「調べんなよ、変態」

「眞白って名前、綺麗だね?心桃と似てると思わない?」

「真逆だろ。つか、そういやお前に聞きたいことあるんだけど」

「はい?」

海老センがポケットから煙草を出した。先日吹きかけられた煙の匂いを思い出す。敷地内禁煙なので、まさか吸うつもりじゃないでしょうねと訝しげに見ていれば、前髪の隙間から覗いた目と出会う。

「鍵、ちゃんとポストに入れたよな」

「入れましたよ!」

もちろん嘘だ。本当は私のキーケースの中である。

「いやー、見当たらねえのよ」

「そうなんですね!悪用されたら大変ですね!」

「大変だなあ。鍵、変えるか」

「え!?変えるの!?」

「悪用されたら大変だからな」

「海老センの家に来たがる悪趣味な人居ないから、変えなくて良いと思うよ!」

「そうだな〜。黙って鍵を持ち帰る悪趣味なやつは居たけどな〜」

「見てみたいな〜!きっと、すっっっっごい美少女だろうね!」

はははととりあえず笑顔を作った。心の中は熱いくらいに燃えている。