悠衣と入れ替わるように現れたのはゆり葉だった。

「はよー。なんか面白いことあった〜?」

3限目だけど、ゆり葉の遅刻は通常運転である。とりあえず「普通」とだけ説明すると「じゃあいいや。眠」と、早くもゆり葉は眠そうだ。今日もおそらく、セフレの家から登校したのだろう。聞かないけどさ。

「ゆり葉、こないだ荷物預けてくれてありがとね」

それよりも、私が気になるのはこちらである。

「いーよ。どうだった?した?」

二言目に情事の有無を確認するけど、残念ながら、するわけない。だって、海老センだもん。

「ゆり葉、アイツになんも言われなかったの?」

「え?アイツって?」

「だから、私の荷物預けた人」

「全然。めっちゃかっこよかったね?全方向イケ散らかしてた」

ゆり葉はそう言って、取り出したスマホに視線を落とした。海老センとは気づいていない。

「(……ゆり葉には言ってないの?)」

謎だ。なぜゆり葉はお咎めなしなのか、なぜ私だけ連れ出したのか、海老センの行動が掴めない。

あれ、海老センだよ?

仕返しにって。後先考えず、ばらしちゃえばいいのに。

私はなぜ、言わなかったのか。