床にバッグを置こうとして、気づく。

「あ、そういえば荷物……」

私のバッグはロッカーに預けたままだった。ゆり葉にお願いすればいっか。

海老センは水槽じゃなくて、クラブのダンスホールで泳いでましたって、学校でゆり葉に言ってやろ。

それにしても、あの余裕の笑顔が無性にムカつく。

私の態度としては、提出関連は確かにルーズだ。でも、授業は真面目に受けている。

それなのに、それだから、プライベートでおざなりにされるなんて。

認めたくない。信じたくない。結果、いら立ちとなって積もってゆく。

「なんか探してやろ」

ムカつくので、粗探しを始めた。こんなに可愛い私を一人置き去りにしているのだから、許されるだろう。

「(うわ、超まとめてる……)」

唯一片付いていないのがテーブルの上。次の授業でつかうプリントらしい。

寝てる人が多いし、真面目に受けている比率はどう見ても少ない。

でも、私は古典の授業が好きだ。海老センの授業って、面白いんだよね……。あと声がいいから嫌でも聴きたくなる。

粗探しは早々に止めた。なんか、なんていうか、人として終わる気がする。


「海老センが帰ってくるまで居てやるもんね」


早々にシフトチェンジである。曲がりなりにも海老センは先生だ。私が困った以上に、困ってしまえば良いのだ。