初対面のイケメンに学校も学年もクラスも出席番号まで言い当てられ、ぽかんと口を開けた。

「(え……?もしかしてこのイケメン、私のこと好きだったりする?)」

登校中、もしくは下校中に私のことを見かけていて、偶然居合わせたクラブに私が居たから、連れ出してくれた……?

ということは、これって恋のチャンスだったりする?

合コンは最悪だったけど、どこでどんなチャンスが落ちてるのかわかんないってことですか!!

勝手にハイテンションを極める脳内。しかし、男が耳にかけた前髪をわさわさと乱雑に掻き分けたその時、謎が全て解けた。

顔の半分を覆い隠すぼさぼさの前髪、ゆるっとしたTシャツ。

「古典の課題ちゃんと出せよ〜」

気のない右肩下がりの抑揚。

「は!?え、海老セン!?」

教壇に立つやる気のない教師の風貌だった男は、髪をかきあげると先程のイケメンへと変化する。この数分で脳の高低差が激しい。

「火遊びは見逃してやるから、ほら、帰んな」

その人は否定も肯定もせず、ひらひらと手を振る。

私は見逃せないんですけど!?

「や!無理!今日金曜だし、まだ帰りたくない!」

「家が嫌なら、とりあえずお友達のお家に行きな」

「ヤダ!彼氏持ちばっかだもん!」

「あ〜〜〜、めんどくせえ〜〜……」