「出せないだろ」

ぐうの音も出ず、言い淀む。しかし、見ず知らずの人に言われて、はいそうですねって引き下がりたくもない。こういう時は、別の逃げ道を探すほうが良い。

「て、ていうか、なんで17歳って分かったの!?」

「どっからどう見ても高校生だから」

「顔いいからって失礼すぎん!?」

「はいはい。失礼しました〜」

逆に、どこを見てるんだって言ってやりたい。ていうか、セクハラだからなそれ。顔がいいから許されるんだ。

くそう、なにか悪口を……!と、見た目の欠点を探してみる。しかし、なにも出てこない。かっこよすぎて無理!

早々に諦めるという展開に、自分のボキャブラリーの乏しさを感じた。ボキャブラリーというより、完全に、顔のいい男に弱いという弱点である。

さらに逃げ道を探すと、繋がれた手に狙いを定めた。


「い、いい加減離してよ!」

「離したらさっきの場所、戻るでしょうよ」

「あんたにとやかく言われる筋合いありませんけど」

「残念ながらこっちにはあるんだわ。暁高校2年7組13番、黒崎心桃」

「……へ、」