この授業で書き留めることなんて一つもないでしょ、と言いたくなるようなお飾りのルーズリーフを使ってあたしに質問を投げ込んできた。
めんどくさい、と意味を込めて隣を見上げると、至って彼は余裕そうに目を細めて、トントン、と髪を指さす。
あぁ、逃がしてはくれなさそう。一生視線がこちらに向いている気がして、観念した。
【政経】
もうこれ以上聞いてくんな、あたしはおじいちゃん先生の(以下略)という思いを込めてあまりあまったルーズリーフを彼のほうへと戻せば、彼はまた何やらボールペンを滑らせ始める。
チャラついたこの男の無駄に綺麗な字。すぐに無駄ルーズリーフの上に乗せられた無駄綺麗字が返ってきた。
あたしはボールペン字講座で習いそうな字より、今時黒板にチョークとかデジタル化の敗北だよとでも言いたくなるような白い粉のおじいちゃん字を見ていたいのだ。
……気持ちはそうでも勝手に目線が手元に下がる。デジタル化より先にあたしの負けだ。
【一緒だね ちなみに俺は会ファ】