“ゆず”と彼しか呼ばない呼称。


この人のことを──田邊瑛斗のことを“瑛くん”と呼ぶのもおそらくあたしだけだ。



あの頃、その控えめに言っても整いすぎた顔が大好きだった。


どのパーツも綺麗で配置も完璧。もしこの人が俳優を目指すっていうのなら確実に戦隊モノのオファーが来るだろう。



猫みたいで犬みたいで、かっこよくて可愛くて、ちょっと気だるそうなところもあの頃のあたしは強烈に惹かれて、「理想の王子様、いた!」と一目見て確信したんだった。



……まあ、それも今となっては苦い過去。それでも今この男を目の前にして、あの時のときめきが鮮明に思い出せるくらいには、やっぱりかっこいい。


成長してさらにかっこよくなっている気がする。

だからと言って、好きなわけではさらさらない、当たり前に。むしろ嫌いな部類。