そしてまた、イレギュラー。何ひとつとして理解できていない状況の中、その声ひとつでまた、この状況に謎が増える。


しかもその声にはなぜか聞き覚えがある。低くて少し掠れたような声。あたしこの声、嫌いじゃなかった気がする。

全く知らない場所で、どこか聞き覚えのある声。


その声の持ち主から、今の状況、どうにか掴めるのではないかと辺りを見渡せば、広くはないけど綺麗に整理されたワンルームだという情報を手に入れることができて、最後、部屋の装飾の後、目に入ったその人物に呼吸を忘れそうになった。



あの声の持ち主。ソファに座ってグラスに口をつけるその人。お酒かな。昔と変わっているのは髪色のみ。




中学生にして明るい茶髪で目立っていた髪色は、黒く艶が煌めいていた。


まんまるでちょっとだけつり気味な目とか、薄くて形のいい唇とか、スッと通った鼻筋とか、低くて掠れた甘い声、あの頃からみんなの憧れでみんなが好きで、あたしもたぶん、例外じゃなかった、と思う。