「ところで、そこの二人!」


不意に、越後屋が子豚とひろきを呼びつける。


「え?」


そう言って振り返る子豚の口には、大きな海老の天ぷらが…一方のひろきの右手には、自分の為用の徳利があった。


「さっきから見ておればお前達、飲み食いばかりで何もしとらんではないか!芸者ならば芸のひとつでも披露せんか!」


「芸だって、コブちゃん……芸って、何やればいいの?」


そんなひろきに、越後屋は酒のまわった赤い顔でまくし立てる。


「唄とか踊りとか出来んのか!お前達芸者だろっ!」




「う~~ん………
…それじゃあ『倖田クゥちゃん』の……」


「ちょっと、ちょっと待ちなさい!ひろき!」


少しはにかんだ顔で歌の紹介を始めるひろきに、子豚が慌ててその腕を引き、部屋の外へ連れ出した。