「まぁ、美味そうな饅頭だが…儂は、この下に入っておる物の方が実は
もっと好物でな♪」


まるで最初からその中身が解っているような口ぶりでそう言って、饅頭の並んでいる一段目の底板を持ち上げ、にやけた顔でその下を覗く代官。
















「二段目は、『白あん』にてごさいます♪」


「……………………」



箱の二段目には上の饅頭と生地の色が異なる、別の饅頭が並べられていた。


それを満面の笑みで説明する越後屋に、少し戸惑う代官。


「な…成る程、これは
三段重ねになっておるのか♪……ならば、この下は当然……」


気を取り直して二段目の底板を持ち上げ、その下を覗く代官。















「『うぐいすあん』にてごさいます♪」


「だわあああ~~~っ!こんなに饅頭ばっかり食えるかよっ!カネよこせってんだよ!カネ!」


さっきまでの笑顔はどこへやら、好物だと言っていた饅頭を越後屋に向かって投げつけながらキレまくる代官!


「ああ~っ勿体無い!
落ち着いて下さい!お代官様!」


「うるせ~っ!空気読めってんだよテメエ~!」


呆気にとられてこの様子を見ていた天井裏のシチローが、ぽつりと呟いた。


「いやぁ…さすがにこの展開は時代劇には無かったな……」