弥七の先導に従って、
意外と簡単に代官屋敷の天井裏へと忍び込む事に成功する事が出来た
シチロー達。
薄暗く狭い天井裏から
眼下を覗くと、そこには膳を挟んで対面する二人の男が見える。
「うまい具合に、代官と越後屋の密談する部屋の上に来たようだな」
入り口から遠い奥に座っている方が代官『山中与五朗』。そして、その前で揉み手をしながら
やけに低姿勢で喋っているのが越後屋兵部衛である。
「まったく、山中様そして大隈様のこの度のご決断には、この越後屋、感服致しました♪」
「いや何…まだ事が上手く運んだ訳では無いからな…その為には何としてもお主の力で鉄砲百丁を内密に揃えてもらわねばならぬ」
鉄砲百丁とはなんとも
穏やかではない話だ。
天井裏の弥七の顔が曇った。
「こいつら一体、鉄砲なんかで何やらかそうってんだ?」
だが、やがてその悪巧みの詳細は明らかにされた。
「鉄砲百丁の手配はもうすぐ出来ます。ですがお代官様、本当にそれで
上様のお命を頂戴するおつもりなんですか?」
越後屋兵部衛の口から、とんでもない言葉が発せられた。
「うむ…勿論だ。
警護の薄い鷹狩りの時を狙う!そして、上様亡き後は大隈様の手腕により、我ら側の新たなる派閥で幕府を仕切るという訳だ!」
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