わずかな望みだった子豚とひろきの奇襲作戦も失敗に終わった今、人類の未来はもう、シチローの闘いに懸ける以外にない。


しかし、その肝心のシチローは隊尊の集中攻撃を受け、この試合二度目のダウンを喫していた。


「ワーン! ツゥー!
スリィー!……」


両の瞼は腫れ上がり、唇からは血が滲み、胸も二の腕も青くアザが出来ている。


いったい、どれだけ殴られればこれだけ酷い姿になるのだろう。


そんな、体中ボロボロの状態でマットの中央に突っ伏しているシチローに対して、凪はもう、再び立ち上がり闘う事など望んではいなかった。


「シチロー、もういい……貴方はもう精一杯闘ったわ…
たとえ、これで人類が永久に機械の支配下に置かれる事になったとしても、誰にもシチローを責める事など出来ない…」


このままでは、人類の完全なる負けである。


しかし、今の凪には、不思議な事に悔しさ感情が湧いてくるという事はなかった。



自分達の為に、これほどまでに命を懸けて闘ってくれた仲間がいた事…




シチロー、てぃーだ、
子豚、そしてひろき。



こんなにも素敵な仲間と時空を超えて出会えたという事実。







「たとえこの先、どんな試練が待っていようとも……………
私は…
私は人間で良かった!」





そう言って、motherを
力強く睨みつける凪の頬には、ひとすじの涙が流れ落ちていた。