しばらくして、登校する生徒の姿が増えてくると、私のうしろで、カチャ、と扉が開く音がする。




「佐々木さん…?ここ、立ち入り禁止なのに、どうしたの?」


「…待っていたわ、天翔(あまと)


「え…?」




 姿を現した中村くんに、名前で呼びかけるものだから、私もびっくりしてしまった。

 私の体は、中村くんを手招きする。

 中村くんは不審がるような目を私に向けながら、ゆっくり近づいてきた。




「あなたを迎えに来たの、天翔。一緒に――」


「さ、佐々木さん?」




 “私”は、中村くんの手首をつかむと、うしろ向きに歩いて、フェンスに背中をあずける。




「お父さんのところへ、行きましょう」


「――ッ!?」