最終ページの日曜日には、朝早くから杉田さんがミーコに会いにきました。

「ごめん、早すぎた」

 午前中の八時でしたが、私も昨夜からあまり眠れず、寝ているミーコを見つめているだけでした。

「うんうん、一人だと心細いから、ありがとう」

 杉田さんを部屋に上げ、薄いカーテンを開くと、ミーコも物音に気づき起き始めました。  
 最終ページは一ページなので、今までと違い狭い空間にミーコも何か気づいているようでした。

 ミーコは笑いながらも辺りを見渡すと、「狭いね」っとつぶやき、何故だか強がっているみたいで私の心を締め付けます。

「お部屋のままにしとく? それともお外がいい?」

 ミーコが望む場所をと思い、問いかけましたが、ミーコ自身も悩んでいました。

「大丈夫だよミーコ、描いて欲しい場所何回でも描いてあげるから、言ってごらん」

 ミーコは少し考え答えます。

「花壇がいい」

 その表情からは笑顔が感じ取れず、いつになく寂しさを思わせるものでした。

「台公園の花壇?」

 ミーコの言葉のまま、台公園の花壇の場所を描きました。
 描き上がるとミーコは無言のまま、しゃがみ混むように眺めています。

 その仕草をみて、私と杉田さんは戸惑いました。
 明るく振舞いながらしゃべりかけてみても、元気がありません。

 お昼になっても、食事はここで食べるとミーコは話します。
 私はその場所にシートと、サンドイッチを描きました。

 夕方になっても、ミーコは花壇のままで良いと言います。
 私達は特別なことをしたかったのですが、ミーコはこの花壇を消すことを拒否します。

 あっー嫌だ。もし今日が最後の日ならば、こんな別れ方は。
 ミーコをもっと楽しませたい。もっと会話をして幸せを感じさせたい。

 私達は困惑する中、杉田さんは考え、違う言葉でミーコに聞いてみました。

「ミーコちゃん、欲しいものや、やってみたいこと、うーんそうだなー、そう、叶えたい事は何かあるかなあ?」

 その言葉に興味を示したのか、ミーコは真剣な表情に変わり、杉田さんの顔を見つめています。
 私は杉田さんの言葉で森川さんから聞いた、ペンタスのことを思い出していました。

 急ぐように花壇のパンジーの中央にペンタスを。そして空には一番星を描き加え話します。

「この花はねペンタスと言う名前の花なんだよ。森川さんに教えてもらったんだけど、なんでも願いを叶えてくれる不思議な花なんだって、ミーコ、このページを願い事で埋め尽くそうよ」


 ミーコは不思議そうな顔をしています。

「願い事?」

「そう、ミーコの願い事」

 しばらくすると、ミーコは下を向き打ち明けました。