営業に出かけていた高木さんと杉田さんは、お昼に会社に戻ってきました。
高木さんは私に気づくと、一目散にそばに寄ってきて、深々っと頭を下げます。
「ボーリングの時は本当にごめんね」
謝る高木さんの後方から、睨んでいる桜井さんが視界に入ります。
私は何だか高木さんが、可哀想に思えてきました。
「いえ、……大丈夫です」
高木さんは桜井さんにアピールするように私の手を握りながら、謝罪の言葉から、感謝の言葉に変わります。
「ありがとう、ありがとう、許してもらえて良かった」
社内に響くような大きな声で繰り返すと、席に戻りながら時折、櫻井さんを意識していることがわかります。
杉田さんは、少し間隔を空けるように、申し訳なさそうに立ちすくんでいます。
そんな内情を知っているのは、私と杉田さんと森川さんだけです。
近くでは森川さんが目線は合わさないものの、仕事の手を止め見守るように、話を聞いてくれています。
杉田さんは重い口を動かすように、しゃべり始めました。
「あのー……大丈夫?」
「はい、私……」
不思議なノートのことを知っている杉田さんに、何から喋って良いかわからないまま、私はうつ向いていました。
「もし良かったら、仕事が終わってからでも、台公園でお話しませんか?」
「……はい」
返事をしましたが、何も考えることが出来ずに、流されるままの言葉です。
お互いがその場を離れ席に着くと、森川さんは無言で私の肩に優しく手を触れ、励ましてくれているようでした。
仕事が終わると、私と杉田さんは台公園内にある花壇の場所に向かいました。
「久しぶりだなー、ここは通るだけで花見は向こうの広場でやっていたんだー」
無理に明るくし気を使うしゃべりかたは、緊張を膨らませます。
私は心の重荷を下ろしたく、杉田さんの言葉に合わせること無く、すぐに謝罪の言葉を話していました。
「あの日、突然説明も無く帰ってすみませんでした」
私が頭を下げると、杉田さんの言葉から、慌てていることがわかります。
「そんなー、全然田中さんは悪いことないですよー、あれは、そのー」
言葉に困っているようでしたが、本題に触れることを決意したのか、杉田さんはかしこまった口調で話します。
「ノートのこと聞きました。……見せてもらってもいいですか?」
私はその言葉に、心臓が縮まる思いをすると、カバンからノートを取り出し手渡しました。
杉田さんは大事そうに受け取ると、ノートをゆっくり開きます。
ノートを持つ手はまるで赤ん坊を抱くようにしっかり優しく、ページも丁寧にめくっています。
そんな優しい仕草を見つめながらも、私の中では不安な感情が膨らんでいきました。
「この子は、何て言う名前ですか?」
どうやら、ミーコの居るページにたどり着いたようです。
やはり杉田さんにも、ミーコが見えるようでした。
「ミーコです」
杉田さんは緊張をとくように深呼吸をした後、優しいしゃべり方で話しかけました。
「初めましてミーコちゃん。僕は杉田恵(スギタメグミ)と言います」
私はノートの中が見えなかったので、その時ミーコがどんな表情をしているのかわからず、とても不安な時間を過ごしていました。
杉田さんは胸からシャープペンを取り出すと、ミーコのページに何かを描き始めました。
その行動が何かわからず、一瞬時間を置いてしまいました。
私以外の人が、ノートにペンを入れている。
そう頭で認識すると、私は慌てて杉田さんを突き飛ばしノートを取り上げていました。
地面に尻もちを着いた状態の杉田さんは、びっくりした表情でこちらを見つめています。
私はノートを抱きしめながら、強い口調で言いました。
「やめてください、何をしているのですか!」
咄嗟に出たその言葉と行動は、無力のミーコに何か悪いことをしているのではないかと考えてしまったからです。
私はミーコが心配になり急いでノートを開き、目を移しました。
「ミーコ、大丈夫?」
ミーコはキョトンとした表情で、部屋の中に立っています。
そして足元には変な形の絵が、描かれていました。
あれ、何だろう?
私は想像と違っていた事態に、少しずつ誤解をしてしまったことに気付きました。
「イテッテッテ」
痛がる杉田さんの声で我に帰ると、慌てて理由を話しながら右手を差し出しました。
「ごめんなさい、私、ミーコが心配になってしまい」
「いえ、説明していない僕が悪いから、緊張してしまって」
手のひらをこちらに見せ、大丈夫とゼスチャーしながら杉田さんは立ち上がると、ペンを入れた理由を説明しました。
森川さんからノートのことを聞いた時、この世界には不思議なことが沢山あると聞いたそうです。
花をヒトデと勘違いする美人な女性や?
子供を白髪にするおばさん妖怪?
そして人格を判断するノートで生きる女の子?
彼女ににまず気に入られるようになるのが、第一条件だと言われたそうです。
その条件を解決出来なければ、今後私とお付き合い出来るチャンスは無くなり、真実の愛も二度と手にいれることは出来ないと言われたそうです。
私はその話を聞き、何のことかさっぱりわかりませんでした。
「僕わからなかったから、相談したんだ。ノートの彼女に気に入られるにはどうしたらいいか。そうしたら、お花などのプレゼントをあげて喜ばせてはどうかと、アドバイスをもらって」
話を聞くうち森川さんは私には力になってくれるのではと言う理由でしたが、杉田さんには面白がって、違う内要の話をしたようです。
そのことに気付き、恥ずかしくなりました。
そして、ノートに描かれた変な絵は、花だとわかりました。
植木鉢にも入っていない、部屋の床から生えるその花は、形からして多分チューリップだと思われます。
私は何だか可笑しくなり、笑ってしまいました。
杉田さんも、そんな私につられ笑っています。
ノートを見ると花には見えない杉田さんの描いた絵を、ミーコは引っこ抜いていました。
その日、改めて不思議なノートの話を、杉田さんにしました。
そして杉田さんからは、私に好意を持ってくれていることを聞きました。
その日の夕日は、私達をいつもより、赤く染めているように感じました。
高木さんは私に気づくと、一目散にそばに寄ってきて、深々っと頭を下げます。
「ボーリングの時は本当にごめんね」
謝る高木さんの後方から、睨んでいる桜井さんが視界に入ります。
私は何だか高木さんが、可哀想に思えてきました。
「いえ、……大丈夫です」
高木さんは桜井さんにアピールするように私の手を握りながら、謝罪の言葉から、感謝の言葉に変わります。
「ありがとう、ありがとう、許してもらえて良かった」
社内に響くような大きな声で繰り返すと、席に戻りながら時折、櫻井さんを意識していることがわかります。
杉田さんは、少し間隔を空けるように、申し訳なさそうに立ちすくんでいます。
そんな内情を知っているのは、私と杉田さんと森川さんだけです。
近くでは森川さんが目線は合わさないものの、仕事の手を止め見守るように、話を聞いてくれています。
杉田さんは重い口を動かすように、しゃべり始めました。
「あのー……大丈夫?」
「はい、私……」
不思議なノートのことを知っている杉田さんに、何から喋って良いかわからないまま、私はうつ向いていました。
「もし良かったら、仕事が終わってからでも、台公園でお話しませんか?」
「……はい」
返事をしましたが、何も考えることが出来ずに、流されるままの言葉です。
お互いがその場を離れ席に着くと、森川さんは無言で私の肩に優しく手を触れ、励ましてくれているようでした。
仕事が終わると、私と杉田さんは台公園内にある花壇の場所に向かいました。
「久しぶりだなー、ここは通るだけで花見は向こうの広場でやっていたんだー」
無理に明るくし気を使うしゃべりかたは、緊張を膨らませます。
私は心の重荷を下ろしたく、杉田さんの言葉に合わせること無く、すぐに謝罪の言葉を話していました。
「あの日、突然説明も無く帰ってすみませんでした」
私が頭を下げると、杉田さんの言葉から、慌てていることがわかります。
「そんなー、全然田中さんは悪いことないですよー、あれは、そのー」
言葉に困っているようでしたが、本題に触れることを決意したのか、杉田さんはかしこまった口調で話します。
「ノートのこと聞きました。……見せてもらってもいいですか?」
私はその言葉に、心臓が縮まる思いをすると、カバンからノートを取り出し手渡しました。
杉田さんは大事そうに受け取ると、ノートをゆっくり開きます。
ノートを持つ手はまるで赤ん坊を抱くようにしっかり優しく、ページも丁寧にめくっています。
そんな優しい仕草を見つめながらも、私の中では不安な感情が膨らんでいきました。
「この子は、何て言う名前ですか?」
どうやら、ミーコの居るページにたどり着いたようです。
やはり杉田さんにも、ミーコが見えるようでした。
「ミーコです」
杉田さんは緊張をとくように深呼吸をした後、優しいしゃべり方で話しかけました。
「初めましてミーコちゃん。僕は杉田恵(スギタメグミ)と言います」
私はノートの中が見えなかったので、その時ミーコがどんな表情をしているのかわからず、とても不安な時間を過ごしていました。
杉田さんは胸からシャープペンを取り出すと、ミーコのページに何かを描き始めました。
その行動が何かわからず、一瞬時間を置いてしまいました。
私以外の人が、ノートにペンを入れている。
そう頭で認識すると、私は慌てて杉田さんを突き飛ばしノートを取り上げていました。
地面に尻もちを着いた状態の杉田さんは、びっくりした表情でこちらを見つめています。
私はノートを抱きしめながら、強い口調で言いました。
「やめてください、何をしているのですか!」
咄嗟に出たその言葉と行動は、無力のミーコに何か悪いことをしているのではないかと考えてしまったからです。
私はミーコが心配になり急いでノートを開き、目を移しました。
「ミーコ、大丈夫?」
ミーコはキョトンとした表情で、部屋の中に立っています。
そして足元には変な形の絵が、描かれていました。
あれ、何だろう?
私は想像と違っていた事態に、少しずつ誤解をしてしまったことに気付きました。
「イテッテッテ」
痛がる杉田さんの声で我に帰ると、慌てて理由を話しながら右手を差し出しました。
「ごめんなさい、私、ミーコが心配になってしまい」
「いえ、説明していない僕が悪いから、緊張してしまって」
手のひらをこちらに見せ、大丈夫とゼスチャーしながら杉田さんは立ち上がると、ペンを入れた理由を説明しました。
森川さんからノートのことを聞いた時、この世界には不思議なことが沢山あると聞いたそうです。
花をヒトデと勘違いする美人な女性や?
子供を白髪にするおばさん妖怪?
そして人格を判断するノートで生きる女の子?
彼女ににまず気に入られるようになるのが、第一条件だと言われたそうです。
その条件を解決出来なければ、今後私とお付き合い出来るチャンスは無くなり、真実の愛も二度と手にいれることは出来ないと言われたそうです。
私はその話を聞き、何のことかさっぱりわかりませんでした。
「僕わからなかったから、相談したんだ。ノートの彼女に気に入られるにはどうしたらいいか。そうしたら、お花などのプレゼントをあげて喜ばせてはどうかと、アドバイスをもらって」
話を聞くうち森川さんは私には力になってくれるのではと言う理由でしたが、杉田さんには面白がって、違う内要の話をしたようです。
そのことに気付き、恥ずかしくなりました。
そして、ノートに描かれた変な絵は、花だとわかりました。
植木鉢にも入っていない、部屋の床から生えるその花は、形からして多分チューリップだと思われます。
私は何だか可笑しくなり、笑ってしまいました。
杉田さんも、そんな私につられ笑っています。
ノートを見ると花には見えない杉田さんの描いた絵を、ミーコは引っこ抜いていました。
その日、改めて不思議なノートの話を、杉田さんにしました。
そして杉田さんからは、私に好意を持ってくれていることを聞きました。
その日の夕日は、私達をいつもより、赤く染めているように感じました。