「最近のノートって凄い……」
 立ち止まった私に気付き、杉田さんは少し戸惑っています。
 ミーコが見える人がいる……私以外見えないと思っていたのに、予想も出来なかった事態に困惑します。

 どうしよう? 説明しなきゃ、それとも。
 決心のつかない選択肢だけが、頭を巡りました。
 正直に話したら。

 そう思い杉田さんを見ると、声が出ません。
 不思議なノートを持っているいる私を知ったら、変な子だと思うかな? 嫌われてしまうのかな?
 だって、絵に描いた少女が、今では家族同然のような存在です。 

 悪い結果だけが予測され、苦しめます。
 嫌われたくない。
 そう思うと冷静な判断が出来なくなってしまい、私はその場から逃げ出してしまいました。

「田中さんどうしたの」

 杉田さんの驚く声が、耳に残ります。
 頭の中では冷静になろうと考えている私と、駆け抜ける街並みを、映像のように見ている私が二人いるようでした。
 まるで、心と体が離れた状態を作り上げています。

 帰りの電車の中では、心臓のドキドキする音が頭の中まで聞こえます。
 私動揺している。
 そんな冷静に自分のことがわかっていても、落ち着いて考えることが出来ません。

 私は家についてからも、なぜ杉田さんにミーコが見えるのか困惑していました。
 親にも見えない、親しい森川さんにも見えないのに、何故杉田さんには見えるのだろう? 
 その日の記憶は曖昧なまま、考えることに疲れた私は、いつの間にか寝ていました。