休日の時間は、一週間分の部屋の掃除と洗濯が、一日の過ごし方です。
 午前中にそのことをゆっくりすませ、少し遅い朝食と昼食を同時に取ります。
 何もすることの無い休日の午後は、何処に出かける予定も無く、ただ次の日を迎えるだけの時間です。

 何故だか昨日描いた彼女が気になると、ノートを広げ見つめていました。
 白い空間の中で、彼女は寂しそうにしています。
 罪悪感のような気持ちになると、一人ぼっちの彼女を笑顔にするため、自分に言い訳をしていました。
 

 絵の中ぐらい幸せでもいいよね、このままページを終わらせても、もったい無いから。

 殺風景な空白部分に、実家の裏庭の背景を描き足していきます。
 ノートの中の彼女はノースリーブのワンピースを着ているので、季節は夏の裏庭です。
 土の地面の上には、歩きやすいように石畳をひき、昔遊んだ小さなビニールプールを描きました。

 確かこんな感じだったよね。

 ビニールプールには、ゴムマリや水鉄砲を浮かべ……これだけでは何か寂しい。
 考えている私は、背表紙を見てつぶやきました。

「ペンタスってお花かー」

 公園で見たお花、あれがペンタスかしら?

 再びノートのページに鉛筆を当て、お花の絵を描こうとしました。

 そうだ、せっかくだから、本当に好きな花。

 思い出し、現実の裏庭には咲いていなかった、ブーゲンビリアを描き加えました。
 その名前の花は、鮮やかに染まる花びらを持ち、何かを訴えかけているように咲いていた、私のもっとも好きな夏の花です。

 咲いていたら綺麗だっだろうなー

 丁寧にブーゲンビリアをなぞっていると、不思議な感覚を覚えます。
 今でも好きな花であると認識していますが、当時魅了されていた理由を噛み締める思いです。
 大きな花を咲かせ、花びら一枚一枚を色濃く染め上げる美しい花。

 子供の頃、裏庭に咲いていてほしいと思っていた。
 
 記憶がよみがえると、今でもそのことを願うほどです。
 残念ながら今までブーゲンビリアを見る機会は余り無く、幼少期の時に出かけた市民プールの周りに、赤く咲いていたのを見かけただけでした。
 
 両親と出かけた市民プール。

 大好きだったブーゲンビリアを通し、忘れていた記憶が広がるように思い出されます。