「どお? 仕事楽しい?」

 いつになく積極的に喋る専務に驚きながらも、私は答えていました。

「はい、わからないことがまだ沢山ありますが、みなさん優しくしてくれるので」

「良かった……」

 専務は安心した顔で、出来上がった鶴を手渡してくれると、カバンから少し大きめな手帳を取り出しました。

「こんな時に仕事の話もなんだけど」

 そして、それに挟まれていた遊園地の広告チラシを、私に見せます。

「遊園地のキャラクターでこの二匹の猫がいるでしょう、この猫の友達。三匹目のキャラクターを考えて欲しいんだ、いいかなー」

 嬉しい内容と、それ以上の緊張が走りました。

「もともとはお母さ……社長が昔担当していたんだけど、今回から僕が担当になってね、……社長がデザインは田中さんでどうかと」

 話しの途中にもかかわらず、嬉しさが膨らみ力強く答えました。

「頑張ります」

 専務はその言葉を聞くと、にっこり笑い立ち上がります。

「……よろしくね」

 大きな専務の手は、私の肩を優しくポッンっと叩き、トイレの方に歩いて行きました。

 専務って結構喋るんだー、それにいつもより凛々しい、そんなことを思いながら今まで座っていた席の下を見ると、ビールの缶が四本空いていました。

 あっはっはっはっ……酔っぱらっていたのか。

 再度嬉しさがこみ上げてきて、ノートを取り出しミーコに伝えました。

「ミーコ、私やりたかった仕事が出来るかも?」

 ノートの中ではミーコは寝ていたらしく、寝ぼけながら、目をこすっていました。

「猫のキャラクター考えるの、ミーコ協力してくれる?」

 私はこれから作るキャラクターを、ミーコと一緒に作成していこうと考えました。
 ミーコにチラシを見せましたが、起き上がったものの目はつむった状態でフラフラしています。

 それを見て笑っていると、弱々しい声で話しかけられました。

「そのノート。何が描いてあるの」

 よっぱらった高木さんが、近づいて来ました。

 シャツをズボンからはみ出させ、頭にネクタイを巻いただらしない格好をしています。

「いつも大事にしているね、何が描いてあるの?」

 高木さんは私からノートを取り上げると、おもむろに見ています。

 ミーコに危機感を感じると、強い口調になっていました。

「返して下さい」