会社のボーリング大会は対抗戦で、三ゲームの合計点数によって争われます。

 橘専務、森川さん、石井さん、そして私のグループ。 

 鈴野さん、桜井さん、高木さん、杉田さんのグループに分けられました。

 皆さんとても上手で、特に森川さんと鈴野さんは、ずば抜けていました。
 ボーリング経験のない私の投げるボールは勢いが無く、ガターにならないものの、倒れるピンはせいぜい五本ぐらいです。

 両手で抱えるように特殊な投げ方をする石井さんは、ガターかストライク、もしくは九ピン近くを交互に倒し、ここでも注目される存在でした。


 二ゲーム目が終わると、私が足を引っ張りながらも、ハンデのおかげで私達のグループがリードしていました。
 桜井さんは鈴野さんに近づき、ある提案を持ち掛けていました。

「ここは、勝負のことを考え、鈴野さん一人で行う作戦に切り替えませんか」
 
 話す桜井さんの目線の先には、酔っぱらた高木さんと、それを介抱する杉田さんの姿が見えます。

「杉田ー聞いてくれよー、医者が油濃い物は控えろって言うんだよ、俺悲しいよ」

「僕、お茶か何か買ってきますね」

 杉田さんも、ボーリングどころではなくなっているようです。

「お願い出来ますか」

 呆れた顔で話せいた桜井さんに、鈴野さんは頷いていました。
 石井さんもその話が聞こえると、森川さんにお願いをしています。
 酔っぱらっていた高木さんが抜け、上手な鈴野さん一人で行うことを考えると、逆転されてしまうことは、目に見えています。、

 しかもそれとは関係は無い場所では、橘専務がカバンから、折り紙を取り出していました。
 
 三ゲーム目は森川さんと鈴野さんの、一騎打ちで争われました。
 応援しながら見ている私の隣の席では、橘専務が折り紙を折っています。
 手元の折り紙は二匹つながった鶴に織り上がって行き、その器用な手先に驚いていしまいました。

 橘専務の表情を確認すると、顔を赤くし話してくれました。

「僕はね、昔から人と接することが苦手だったから、一人でいることが多くてね、子供の頃に見つけた楽しみが折り紙だったんだ」

 凄く小さな声で話してくれた言葉は、幼少期のことでした。

 私と少し似ている経験に、寂しさを感じさせます。

 鶴が折り終わると、始めてこちらを見ました。