そんな考えの中、高木さんは突然、それまでより大きな声を発しました。

 「杉田〜ごめーん。詳しいことお前から説明しといて。俺急ぎの用事思い出したから」

 私はその声に驚き、身体をビクつかせます。 
 
 顔を上げると、高木さんは足早にその場から立ち去りながら、身振り手振りをしながら杉田さんに説明しています。
 代わりに杉田さんが私の側にかけ寄ってきます。

「急に日にちが決まっちゃったけど、大丈夫かな? もし用事がなければ参加しましょうよ」

 杉田さんは笑顔で、私のことを誘ってくれています。
 顔をが火照り、汗ばんでいるのを自覚しながらも、素直に参加しますとは、恥ずかしくて言えないでいました。

 そんな私を見てか、石井さんが後押しをする言葉をかけてくれます。

「美代子は私達の組だから、できるだけ参加しなさいよ。ボーリングしたことないって聞いたけど、何事も経験よ経験。練習するつもりで参加しなさい」

 ぶっきらぼうな言葉ですが、誘ってくれています。
 何よりも驚いたのが、いつの間にか石井さん達の間で美代子と呼ばれるようになっていました。
 森川さんも席に戻ってくると、指でオーケーサインを作り話します。

「安心して、ハンデいっぱいもらえたから」

 女性達の間では、すでに参加する前提で話が進んでいます。
 何故かそのおせっかいが、嬉しく思える私がいました。

「あのー、参加します。よろしくお願いします」

 顔がほてりながらも意志を伝えると、杉田さんは声を弾ませ答えてくれます。

「よかったー、みんなで楽しみましょうね」

 私は恥ずかしくなり視線をそらしていると、杉田さんは気付いた口調でしゃべります。

「あれ、これ会社近くの台公園じゃないですか?」

 杉田さんは、机の上に開いて置いた、ノート見て話しています。
 今日のミーコの居るページは、台公園の花壇を描いていました。
 初めて訪れた時は、たまたま天候の変化と、私の思い込みで、気味が悪く感じたのかもしれません。

 改めてミーコと一緒に出かけてみると、その場所の景色は別世界のように映ります。
 花壇は丁寧に手入れされていて、中には天使や動物のオブジェなどが置かれています。
 いつ訪れてもお花が咲いていることから、休日には近隣住民の憩いの場所になるほどです。


 ミーコはこの場所がお気に入りらしく、ノートにも何度も描いています。
 今もノートを覗き込む杉田さんのことは気にせず、背を向けしゃがみ、花壇を見ていました。