お祭りの雰囲気を楽しみ終わると、社長と専務は町内会の寄合に顔を出すため、神社の前で私達と別れました。
私達は普段着に着替えるため会社に向かいます。
人を避けるため小道に逃げ込むと、先ほどの白百合呉服店の方に再び会いました。
お連れの方は居なくなり、専務さんともう一人、先ほどの方達と違う人物と居るようです。
「あら、橘デザインの方達、まだいらしたの?」
私は社長が居なかったことと、挑発的な態度に怖くなり隠れるように小さくなっていました。
桜井さんや、高木さんは怒った顔をしていましたが、会社の手前我慢をしているように思えます。
その方は勝ち誇ったかのような顔つきで、ゆっくり振り返ります。
「社長、この方達が有名な橘デザインの社員さん達です」
そう話す専務さんの影から、白百合呉服店の社長さんと思われる小柄な女性が現れました。
姿勢を正し、スッスッと足を運び近づいてきます。
街灯が暗く顔がはっきり見えないこともあり、社長と言う役職から厳しい人を連想していました。
「あら、あなた、朝の落下傘スカートの娘さんじゃない」
想像と違う明るい声。
そう話しながら街灯の下に現れた女性は、今朝方信号待ちをしている時にお会いした、年配の方でした。
「そう、橘さんの社員さんだったのね」
私は驚き沈黙していると、満遍な笑顔で近づき頷きながら優しいしゃべり方で話します。
「あらー、朝の服装も可愛らしいかったけど、浴衣姿も素敵ねー」
一歩下がりながら、浴衣姿の全体を見ています。
私は嬉しい言葉と優しい眼差しに照れてしまい、余計に話すことが出来ないでいました。
「良いじゃなーい、清潔感が有ってあなたに似合っているわ、髪の毛も結ったのね。流石ねバランスが良いわ」
襟元や髪型を軽く触れるように整えてくれる手からは、出会って間もない私にも、愛情のようなものを与えていることが伝わってきます。
しばらくすると、気になることがあったのでしょうか? 浴衣を見て少し驚いた表情を浮かべていました。
「あら、珍しい! あなたの浴衣。裏側まで丁寧に染まっているのね……この浴衣……」
私はなんのことかわかえりませんでしたが、社長さんは笑顔になり、私の浴衣の袖をそっと持ち上げました。
「私も大好きこの浴衣、優しい生地、丁寧な染め方、袖を通すだけで職人さんの気持ちが伝わってくるのがわかるわ」
そう話すと、白百合呉服店の専務さんは困惑の表情を浮かべゆっくり近づいて来ました。
疑いの眼差しで、自身の体から顔を遠ざけるようにしています。
メガネをかけ直し私の浴衣を触り確かめると、驚いた口調でつぶやきました。
「何でこんな子が……伝統的な品物じゃない」
社長さんは目を細めながら、優しい口調で話します。
「浴衣も素晴らしいけど、着付けもしっかりしているし、誰一人ごまかしたことしていないわ」
森川さん達を見て、感心したようにうなずくと、専務さんはハッと気付いたような表情で私の着付けを見た後、森川さん達のことを見ていました。
「実はね、あなた達の噂を聞いて勉強させてもらいに来たの、着付けはどこで教わったの」
私は、少し恥ずかしくなりながら答えます。
「あのー私、浴衣着るの子供の時以来で、今日も社長が着させてくれたんです。実はこの浴衣も社長から頂いたものです」
「まーその社長さん、きっとしっかり勉強なさったのね、それに社員さんの着付けをしてくれるなんて、素敵な社長さんね、今度機会があったらお会いしたいわ」
私に話すと、今度は森川さん達を見ていました。
「基本をしっかり把握しているから、新たに取り入れたものも悪ぶることなく素敵に見えるのね」
森川さん達は丁寧にお辞儀をすると、社長さんは姿勢を正し静かにお腹の上で手を重ねます。
「ご挨拶が遅れました。白百合呉服店の店主、白百合ヨネと申します。今回は大変勉強になりました。またご縁があったらよろしくお願いします」
社長さんは深々と森川さん達に頭を下げると、帰っていきました。
社長さんが見えなくなると、石井さんと桜井さんが嬉しそうに聞いてきました。
「田中さん凄いじゃない、知り合い」
私は照れくさく、二人に会釈するだけでした。
今日は色々あったけど、やっぱり良い一日だと思いました。
後日、白百合呉服店から、若者向けに浴衣と着物の柄を考えて欲しいと依頼がありました。
白百合呉服店の社長の要望で、浴衣のデザインは向日葵が印象的だった石井さんに、着物のデザインは桜井さんに決まりました。
見本として店頭に飾られた浴衣と着物は、来年の販売予定にもかかわらず注文が殺到したため、白百合呉服店の専務さんは対応で大慌てだったそうです。
浴衣は予想していたどおり若者に、着物は奇抜な柄から愛好家の方から人気があったそうで、白百合呉服店の専務さんも驚き今では、石井さん達と街中で会うと、喜び仲良く立ち話をするようになっていました。
私達は普段着に着替えるため会社に向かいます。
人を避けるため小道に逃げ込むと、先ほどの白百合呉服店の方に再び会いました。
お連れの方は居なくなり、専務さんともう一人、先ほどの方達と違う人物と居るようです。
「あら、橘デザインの方達、まだいらしたの?」
私は社長が居なかったことと、挑発的な態度に怖くなり隠れるように小さくなっていました。
桜井さんや、高木さんは怒った顔をしていましたが、会社の手前我慢をしているように思えます。
その方は勝ち誇ったかのような顔つきで、ゆっくり振り返ります。
「社長、この方達が有名な橘デザインの社員さん達です」
そう話す専務さんの影から、白百合呉服店の社長さんと思われる小柄な女性が現れました。
姿勢を正し、スッスッと足を運び近づいてきます。
街灯が暗く顔がはっきり見えないこともあり、社長と言う役職から厳しい人を連想していました。
「あら、あなた、朝の落下傘スカートの娘さんじゃない」
想像と違う明るい声。
そう話しながら街灯の下に現れた女性は、今朝方信号待ちをしている時にお会いした、年配の方でした。
「そう、橘さんの社員さんだったのね」
私は驚き沈黙していると、満遍な笑顔で近づき頷きながら優しいしゃべり方で話します。
「あらー、朝の服装も可愛らしいかったけど、浴衣姿も素敵ねー」
一歩下がりながら、浴衣姿の全体を見ています。
私は嬉しい言葉と優しい眼差しに照れてしまい、余計に話すことが出来ないでいました。
「良いじゃなーい、清潔感が有ってあなたに似合っているわ、髪の毛も結ったのね。流石ねバランスが良いわ」
襟元や髪型を軽く触れるように整えてくれる手からは、出会って間もない私にも、愛情のようなものを与えていることが伝わってきます。
しばらくすると、気になることがあったのでしょうか? 浴衣を見て少し驚いた表情を浮かべていました。
「あら、珍しい! あなたの浴衣。裏側まで丁寧に染まっているのね……この浴衣……」
私はなんのことかわかえりませんでしたが、社長さんは笑顔になり、私の浴衣の袖をそっと持ち上げました。
「私も大好きこの浴衣、優しい生地、丁寧な染め方、袖を通すだけで職人さんの気持ちが伝わってくるのがわかるわ」
そう話すと、白百合呉服店の専務さんは困惑の表情を浮かべゆっくり近づいて来ました。
疑いの眼差しで、自身の体から顔を遠ざけるようにしています。
メガネをかけ直し私の浴衣を触り確かめると、驚いた口調でつぶやきました。
「何でこんな子が……伝統的な品物じゃない」
社長さんは目を細めながら、優しい口調で話します。
「浴衣も素晴らしいけど、着付けもしっかりしているし、誰一人ごまかしたことしていないわ」
森川さん達を見て、感心したようにうなずくと、専務さんはハッと気付いたような表情で私の着付けを見た後、森川さん達のことを見ていました。
「実はね、あなた達の噂を聞いて勉強させてもらいに来たの、着付けはどこで教わったの」
私は、少し恥ずかしくなりながら答えます。
「あのー私、浴衣着るの子供の時以来で、今日も社長が着させてくれたんです。実はこの浴衣も社長から頂いたものです」
「まーその社長さん、きっとしっかり勉強なさったのね、それに社員さんの着付けをしてくれるなんて、素敵な社長さんね、今度機会があったらお会いしたいわ」
私に話すと、今度は森川さん達を見ていました。
「基本をしっかり把握しているから、新たに取り入れたものも悪ぶることなく素敵に見えるのね」
森川さん達は丁寧にお辞儀をすると、社長さんは姿勢を正し静かにお腹の上で手を重ねます。
「ご挨拶が遅れました。白百合呉服店の店主、白百合ヨネと申します。今回は大変勉強になりました。またご縁があったらよろしくお願いします」
社長さんは深々と森川さん達に頭を下げると、帰っていきました。
社長さんが見えなくなると、石井さんと桜井さんが嬉しそうに聞いてきました。
「田中さん凄いじゃない、知り合い」
私は照れくさく、二人に会釈するだけでした。
今日は色々あったけど、やっぱり良い一日だと思いました。
後日、白百合呉服店から、若者向けに浴衣と着物の柄を考えて欲しいと依頼がありました。
白百合呉服店の社長の要望で、浴衣のデザインは向日葵が印象的だった石井さんに、着物のデザインは桜井さんに決まりました。
見本として店頭に飾られた浴衣と着物は、来年の販売予定にもかかわらず注文が殺到したため、白百合呉服店の専務さんは対応で大慌てだったそうです。
浴衣は予想していたどおり若者に、着物は奇抜な柄から愛好家の方から人気があったそうで、白百合呉服店の専務さんも驚き今では、石井さん達と街中で会うと、喜び仲良く立ち話をするようになっていました。