社長はそんな言葉にも動じず、丁寧な口調でした。
「本当に素晴らしい子ばかりで私も幸せです。こうして見ても、一人一人感性は違いますから、それを理解し、受け入れて良い方向に伸ばすことが私の努めだと考えているのですよ」
「まあ、感性ですか?」
呉服店の方はあざ笑うかのように答え、近くに居た石井さんに気付き話します。
「あら、あなた頭に向日葵を付けているの? 凄い感性ね」
そう話すと、一人一人の前を移動しながら舐めるように見ています。
自信に満ちたその目付きは、人を見下しているようにも見えます。
私は怖くなり、小さくかしこまっていました。
その方は私の前に立ち浴衣見ると、表情が変わり少しにらむようにしています。
何故でしょう? 私だけ地味だから変に思ったのでしょうか?
「専務そろそろ行きましょうか」
お連れの方が喋るとハッと我に帰るようになり、再び自身に満ち溢れた表情に変わります。
「どうやら無駄足だったようですね。では私達はこの辺で」
ゆっくり振り返りながらも、冷たい眼差しで、私達を見て立ち去っていきました。
石井さんは怒った口調で話します。
「なーにあの人感じ悪い、田中さん見て睨んでいたね」
私は考えもしなかった出来事にうなだれていると、森川さんが、その場の雰囲気を変えてくれました。
「素敵な浴衣を個性的に着ているから、びっくりしたんじゃない」
語りながら私を見て、微笑んでいるようにも思えました。
私達は気を取りなおし、神社に向かい歩き出しました。
歩きながら、なぜ呉服店の方達がわざわざ声をかけてきたのかを話していると、高木さんは思い出し説明をしてくれました。
現在若者の着物離れが進む中、洋服の量販店が低価格の浴衣を販売したところ、若者が面白がって着るようになり、再び注目が集まったそうです。
その人気は年々高まって行きましたが、浴衣は次第に派手さを求めるようになったそうです。
そこに目をつけた老舗の白百合呉服店も、今年から若者向けに低価格ではないものの、派手さを追求した新しい柄の浴衣を考えているそうです。
近所であることから、私達の噂を聞き見にきたのではないかと言っていました。
私は森川さん達がお祭りの日に注目を浴びているとは、その話を聞くまで知りませんでした。
神社に入ると待ち構えていたかのように、私達は大勢の人達に囲まれ話しかけられていました。
鈴野さんは男性達に桜井さんは大人の女性達に、石井さんは女子高生達に一緒に写真をとってほしいと言われるほど人気者でした。
社長の周りには神社の役員の人達が仕事を忘れ話し始めると、森川さんは私と二人、みんなから少し距離をおくようにしてくれました。
「ここから見える景色を絵に描いたら、ミーコちゃん喜ぶんじゃない!」
森川さんは私に絵を描くタイミングを作り、見えないながらミーコを優しく見守ってくれているようでした。
「ミーコちゃんに浴衣、着せてあげた」
「はい、神社に入る時に描き終わりました。金魚の柄です。今りんご飴食べています」
「よかったね、ミーコちゃん」
私は今この時間がとても楽しく感じ、森川さんのことを少し歳の離れた、お姉さんのような存在だと思いました。
「本当に素晴らしい子ばかりで私も幸せです。こうして見ても、一人一人感性は違いますから、それを理解し、受け入れて良い方向に伸ばすことが私の努めだと考えているのですよ」
「まあ、感性ですか?」
呉服店の方はあざ笑うかのように答え、近くに居た石井さんに気付き話します。
「あら、あなた頭に向日葵を付けているの? 凄い感性ね」
そう話すと、一人一人の前を移動しながら舐めるように見ています。
自信に満ちたその目付きは、人を見下しているようにも見えます。
私は怖くなり、小さくかしこまっていました。
その方は私の前に立ち浴衣見ると、表情が変わり少しにらむようにしています。
何故でしょう? 私だけ地味だから変に思ったのでしょうか?
「専務そろそろ行きましょうか」
お連れの方が喋るとハッと我に帰るようになり、再び自身に満ち溢れた表情に変わります。
「どうやら無駄足だったようですね。では私達はこの辺で」
ゆっくり振り返りながらも、冷たい眼差しで、私達を見て立ち去っていきました。
石井さんは怒った口調で話します。
「なーにあの人感じ悪い、田中さん見て睨んでいたね」
私は考えもしなかった出来事にうなだれていると、森川さんが、その場の雰囲気を変えてくれました。
「素敵な浴衣を個性的に着ているから、びっくりしたんじゃない」
語りながら私を見て、微笑んでいるようにも思えました。
私達は気を取りなおし、神社に向かい歩き出しました。
歩きながら、なぜ呉服店の方達がわざわざ声をかけてきたのかを話していると、高木さんは思い出し説明をしてくれました。
現在若者の着物離れが進む中、洋服の量販店が低価格の浴衣を販売したところ、若者が面白がって着るようになり、再び注目が集まったそうです。
その人気は年々高まって行きましたが、浴衣は次第に派手さを求めるようになったそうです。
そこに目をつけた老舗の白百合呉服店も、今年から若者向けに低価格ではないものの、派手さを追求した新しい柄の浴衣を考えているそうです。
近所であることから、私達の噂を聞き見にきたのではないかと言っていました。
私は森川さん達がお祭りの日に注目を浴びているとは、その話を聞くまで知りませんでした。
神社に入ると待ち構えていたかのように、私達は大勢の人達に囲まれ話しかけられていました。
鈴野さんは男性達に桜井さんは大人の女性達に、石井さんは女子高生達に一緒に写真をとってほしいと言われるほど人気者でした。
社長の周りには神社の役員の人達が仕事を忘れ話し始めると、森川さんは私と二人、みんなから少し距離をおくようにしてくれました。
「ここから見える景色を絵に描いたら、ミーコちゃん喜ぶんじゃない!」
森川さんは私に絵を描くタイミングを作り、見えないながらミーコを優しく見守ってくれているようでした。
「ミーコちゃんに浴衣、着せてあげた」
「はい、神社に入る時に描き終わりました。金魚の柄です。今りんご飴食べています」
「よかったね、ミーコちゃん」
私は今この時間がとても楽しく感じ、森川さんのことを少し歳の離れた、お姉さんのような存在だと思いました。